ここではビットコインや仮想通貨市場におけるクジラの意味を説明しています。クジラと呼ばれるビットコイン大口のBTC保有率なども詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
ビットコインのクジラとは
クジラ(whale/ホエール)とは巨額の資金を動かす(保有する)超大口の投資家のことを指し、投資用語のスラングとして用いられている言葉です。
株式や仮想通貨市場と言った投資の世界だけではなく、カジノなのでも大金を賭けるハイローラーをクジラと呼びますね。
言葉の由来はもちろん、クジラの大きな巨体から怪物や大物を連想したろころから来ています。
そんなクジラと呼ばれる超大口の投資家は仮想通貨市場でももちろん存在します。
ご存知だと思いますが、ビットコインのウォレットのアドレスは誰でも閲覧可能ですよね。
しかしこのアドレスからは、どれだけの量のBTCを保有しているのか、BTCの出し入れの履歴が確認できますが、誰が保有しているのかといった個人情報は分かりません。
※下記で大口やクジラと呼ばれるアドレスを検証しています。
ビットコインの総発行量の4割を1000人で独占?
2017年12月のブルームバーク記事ですが、一部のクジラがビットコインを占有しているという記事が話題になりました。
その記事ではビットコインの40%前後は1000人程度に保有されているのではないかと報道しています。
※今現在(2018年10月)では、1681のアドレスで40%を占めているデータが出ています。
またブルームバークでは、このクジラは今後ビットコインを売却したくなると予想していましたが、ブロックチェーン調査企業のDiarが最近、提出したレポートにより、多くのクジラがビットコインを手放さずに長期ホールドしていることが分かりました。
200BTC以上を保有しているウォレット(アドレス)をクジラと呼ぶと仮定すると、そのクジラの42%が2017年12月のBTC高騰時にもビットコインを動かしていません。
またその動いていないクジラの42%は、BTC全体供給数の55%にも及ぶとされています。全体の半分以上のビットコインがほとんど動いていないと言えますね。
※ただし秘密鍵を紛失して市場から消失したビットコインも含まれていると考えられます。
- 200BTC以上を保有しているウォレットの42%がビットコインを動かしていない
- 200BTC以上のウォレットは全体の55%を占めている。
ビットコインのクジラを検証
ここからはBitlnfoChartsの情報をもとに、実際に大口やクジラと呼ばれるアドレスを検証していきましょう。
10BTC以上を保有するアドレスは全体の0.65%ですが、BTC供給数の87%以上を占めています。
さらに、100BTC以上を保有するアドレスは全体の0.07%で、ビットコイン供給数の62%を占めているということも分かりました。
たくさん数字が出てきて分かりにくくなってきたと思うので、下記でまとめます。
- 10BTC以上のアドレスは全体の0.65%でBTC供給数の87%を占める
- 100BTC以上のアドレスは全体の0.07%でBTC供給数の61%を占める
- 1,000BTC以上のアドレスは全体の0.01%でBTC供給数の40%を占めている
- 10,000BTC以上のアドレスは全体の0.00005%でBTC供給数の20%を占めている
- 100,000BTC以上のアドレスは3つだけでBTC供給数の2.5%を占めている
なんとなくのイメージは付いたでしょうか。大口投資家が供給数の大半を占めていることが分かりますね。
ちなみにビットコインの発行されているアドレス数は全部で約2200万ですが、そのうちの49%にあたる半数の約1100万が0~0.001BTCのアドレスです。
上位5位は仮想通貨取引所
また2018年10月現在で、上位10位のビットコインアドレスの総数は全体の5.85%でした。
株式でも5%ルールというものが存在し、5%以上の株式を保有した場合は報告の義務が発生するように、5%辺りから市場でも大きな影響が与えられると考えられています。
しかし、上位からバイナンス、ビットフィネックス、ビットレックス、フォビー、ビッサムとなっており、ほとんどが個人ではなく取引所のアドレスになっていました。
もちろんクジラは一つのアドレスではなく、複数のウォレット等に分散してBTCを保有しているものと考えられるので、一概にBTCアドレスだけの情報がクジラの保有資産とは限りません。
クジラの動きに注目
直近で最も話題になったクジラのアドレスは、1933phfhK3ZgFQNLGSDXvqCn32k2buXY8a です。
引用元:Bloomberg
このウォレットは約11万1000BTCも保有していたアドレスです。時価総額にすると、最高で20億ドル(約2200億円)もの価値がありました。
このウォレットは2014年から動きがありませんでしたが、2018年の8月下旬に突如動き出し、ビットフィネックス、バイナンス、ビットメックスに分散して送金しています。(取引所でBTCが売却されたと考えるのが妥当…)
またこのウォレットが動いた時と同じ2018年9月5日から2日間でビットコイン価格は15%ほど下落しています。
ビットコイン価格と、このウォレットの直接的な因果関係は確認されていませんが、投資家からすると数万BTCの売り圧力が来るのではないか…という不安からくるマイナス材料になることは間違いないと思います。
このアドレス(ウォレット)の所有者は判明していませんが、一部ではビットコインで取引を行っていた闇サイトの「シルクロード」が関係しているのではないかともいわれています。
2013年10月にFBIに封鎖され所有者が逮捕された闇サイト。シルクロードでは違法薬物やマルウェアやアカウント情報やハッキングサービスなどが販売されており、唯一の決算手段としてビットコインを使用していた
個人的にはシルクロードと、このアドレスを結びつけると話題性がでるので、無理くり関連付けたような気もします。。
またその他にも、このウォレットの所有者はMt.Gox(マウントゴックス)や、自称ナカモトサトシを名乗るクレイグ・ライト氏ではないかという噂もありますね。
いずれにしても、ビットコインのクジラがBTC価格を動かすような大きな力を持っているのは変わりありません。
さらに注意したいのが、このようなクジラの大半は通常の仮想通貨取引所ではなく、OTC取引でビットコインの売買を行っているということです。
OTC取引とは?
OTC(Over The Counter)取引は、日本では「相対取引」や「店頭取引」とも呼ばれています。
OTC取引は、取引所を介さずに投資家と投資家が1対1で直接売買を行う取引方法です。
仮想通貨取引では1回の取引の上限が定められていたり、大口の売りまたは買いを出してしまうと相場自体が暴落・高騰する恐れがあります。
その点では相場に左右されずに、どれだけの量でも当事者の承諾さえあれば取引が成立するOTC取引の方が、大口からすればメリットは大きくなりますね。
そういった面からも、最近ではOTC取引の出来高増加が度々話題に挙がってきています。
リサーチ企業のTABBでは、OTC取引は仮想通貨取引所での取引の量を遥かに上回っているという報告も出しています。100億円単位の取引が頻繁に行われていると予想されています。
多くのクジラやマイニング企業のようなマイナーが、OTC取引でビットコインの売買を行っていると考えると、OTC取引も侮ることができませんね。
といってもOTC取引は一般的には非公開なので、その実態を追うことはできません。
今後は、取引所外でのビットコイン取引が相場に大きな影響を及ぼす可能性も大きいということを覚えておきましょう。
クジラは警戒対象?
多くのビットコインアナリストは、大口投資家が市場操作をする傾向があると警告しています。
確かにクジラの動きは常に警戒しておかないといけいない対象だと思います。
例えば数万BTC保有者(数百億~数千億円相当)のクジラが、結託してBTCの売却を行えば簡単に相場を崩すことは可能です。
事実、現在の相場もそういった仕手筋で荒れることもよくあることです。
また今の規制ではそのような相場操縦も法律的には違法にならないことが、大きな問題として今後の課題となっていますね。
ただしDiarのレポートのように多くのクジラと呼ばれるビットコイン投資家が長期目線での投資を考えていることも分かります。
私見にはなりますが、そういった長期目線の投資家は初期投資組で目先の利益ではなく、さらにその先の技術の発展を見据えた投資家だと推測できます。
事実ビットコインを愛するビットコイナーと呼ばれる方たちはトレード云々よりも技術面に関して非常に博識で、円やドルなどの法定通貨よりもビットコインの方が合理的で効率的と捉えている方が多いように思います。(決済というよりも価値の保存や将来性という意味で…)
今後、ビットコインETFの承認などで市場に新たに機関投資家やクジラが参戦して市場を大きく揺さぶるという可能性は高いと考えられます。
しかし、現状ではそこまでクジラを意識し過ぎる必要もないのかというのが個人的な見解です。